一村さんへの手紙 2022年12月

一村さんへ
今日、絵を見させていただきましたが、どの絵も、とてもきれいな絵でした。
東京の美術大学に通っている者です。
授業で教授に紹介されて、ずっと生でみてみたいなと思っていました。
遠かったけど、建築・環境含め一村さんの世界観を感じられたので来て良かったです!
動物も植物も“生”を感じました。数年後にまた来たいと思います。
どうしても、その場で見たくて奄美まで来ました。
千葉、滋賀…。きれいな美術館で見てもしっくりこなかったからです。
同じ匂いや空気、湿り感の洗礼を受けながら、見ているうつに涙が止まらなくなってしまいました。
「本物には人を圧倒する力がある。人を黙らせて泣かせる力がある。」
これは、私が学芸員1年生の時に先輩から言われて、いまだに使わせてもらっています。
一村さん、泣かせて頂きました。
奄美に来て初めて一村さんの暮らしぶりを知ることができました。
貧しいながらも、持って生まれた才能を発揮できいい人生だったのかな?と思います。
家族愛に恵まれなかったが、お姉さんの優しい心で守られ絵を描き続けられたのかな。
芸術家って世が認めなければ才能を十二分に表すことができないなんて残念。
キッズクラブの皆さん一村さんを盛り上げもっと日本中に知らしめて欲しい。
とうとう、とうとう、奄美に来れたよ。
40年近く前、横浜高島屋の展示会場で1枚1枚の絵を見、キャプションを読み、展示室にも関わらず、涙が止まりませんでした。
経済的にも恵まれずとも、紬の仕事をして、必要な色の絵具を必要なだけ買う生活で描いた絵。
「エンマ大王への土産」の絵の前では立ちすくみました。
こんな立派な美術館が出来、一村さんのお気持ちはいかがでしょう。
さきほどアダンの種を2個拾いました。庭に育ててみたいと思います。
一村さんのアダンが芽を出したらこんな嬉しいことはありません。
師走の頃、天気の急変により渡航できず、初の奄美への宿泊。
宿泊先のやさしさ温かさを笑顔と共に受け取り、出立の準備。
しかし、またもや天候不順による足止め。
時間を持て余した末のこちらへ来館。
外の雨音風音が聞こえたかのような本当に自然な花鳥画の数々。
思わず声とため息が出た。深く深く息を吐いた。
素敵だ。何とも言葉が足りないが本当に素敵だ。
私も下手の横好きではあるが、絵画作成を楽しむが、
こんなにもいつまでもながめていたいような作品は1つも描けてはいない。
努力が足りない?いや、私には愛しむ心がとぼしいのだ。
あなたが愛した奄美の自然。次に訪れる際はかならず見に行こう。
そしてあなたへほんの少しでも近づけるよう描いてみようと思う。