一村さんへの手紙 2025年7月

田中一村様 素晴らしい画業を残してくださったことに感謝します。
はしくれながら日本画を描き,色彩の美しさや表現の難しさ・奥深さを体験している私にとって
一村様がいかに真摯に描くかということに向きあっていたか,よく伝わってきました。
心からこの美術館に来られた幸運に感謝します。
小学校からの友人が母親の故郷である奄美に移住したことが縁となり,一村さんのことを知り
ました。
東京・上野で行われた「田中一村展」で初めて画を目にしました。多くのジャンルを目にし,
とても一人の人間が描いたものとは思えない多彩さに圧倒され,見とれていました。
多くある画の中でも,特に赤・紅の色合いが好きです。これは絵全体の中での色の素晴らしさも
ありますが,父方の祖母の絵はがきに似ていたことも大きいかもしれません。
懐かしくも新しい画….。亡き祖母を重ねていました…。
また,趣味ではありますが,写真を撮っている私にとっては,写真や絵画の構図は勉強になります。
今日は田中一村記念美術館に来られて良かったです。ありがとうございました。
奄美に生まれて,他県に住んでいます。
島をずっと離れていましたが実家を整理し,売ることになりました。何とも思っていなかったのです。
でも何度も島に足を運び,あなたの視た奄美の景色をここで見たとき涙が止まりませんでした。
子どもの頃見た草花,生き生きとした島の自然,生き物,緑黒い森。
時が過ぎ,再びあなたの絵を目にする時,私はきっと島を思って心を動かされるのだと思います。
一村さんへ
小さいときの絵がとても上手ですごいと思いました。絵のバランスと細かいところをよく見ていて,
絵を描くときのヒントになりました。
一つ一つの作品にそれぞれの美しさを感じ,ずっと眺めていたいほど,感動しました。
時代につれて作品の変化も,その背景もとても興味深く,知れば知るほど作品を深く感じることが
できるような感覚がありました。
展示を見て涙が流れたのは初めてです。
一村さんが何を見て,何を感じたのか。これほど美しい作品をつくることができる方の心や頭の中
が気になります。
私も一つ一つを丁寧に感じていたい,今を覚えていたいと思いました。
素敵な思いをありがとうございました。